今夏、古巣のスタンフォード大アジア太平洋研究所より、Visiting Scholar(客員研究員)として招聘を受け、研究するにはあまりに短い期間ながら、「政策立案の視座」を整理する非常に貴重な機会を頂きました。
スタンフォードでは、長年の研究テーマである「日米金融危機対応(特に公的資金注入)の政治経済学的比較」に没頭。「失われた20年」、アベノミクスの評価をはじめ、東電・JAL資本注入や原子力賠償問題など、多岐にわたる考察につながり得る研究ですが、一義的には、1997年拓銀・山一破綻をピークとする日本の金融危機対応と、2008年リーマン倒産をピークとする米国の金融危機対応に対象を絞り、それぞれの政策立案・実施家庭の比較研究を進めました。
このように、研究調査で取り組んだ内容から「政策立案の視座」を得て、実際の政策につなげていくーー こういう形を続け、政治スタンスとして確立し、「良識の府」の一員として、来し方を踏まえた中長期的な視座を元に、「歴史の検証に耐え得る現実的で責任のある」政策立案に精励することが理想です。
臨時国会が近付く中、党本部でも各省の提出法案の説明が始まり、その中で、スタンフォードでの研究を踏まえた質疑を行う機会もありました。(下記の概要をご参照下さい。)
記
9/2 財政金融部会@党本部にて
<滝波>
金融機能強化法の延長案に関連して質問する。
金融危機とは歴史的に見てみると、例外的に起こることではなく、何年か経てばどこかの国でまた起きるという、ある本では「多年草」と呼ぶような事象である。今、世界経済のグローバル化の中である国で起きた危機がどんどん拡散していくことが増えてきており、一方、公的資金投入は過去にアレルギーを起こしたという経緯もあるところ、いざというときの備えにちゃんと作っておかなければいけないという意味で、提案されているこの法律の延長を支持したい。
その観点からだが、危機時において支えていかなければならないというのはあるが、一方で、昔から“too big to fail”問題というものがあって、この大きくてつぶせないという問題に対して、平時にどのように対応していくのかということ――即ち、難時への備えとしてはこの法案のような対策をちゃんとおいておかなくてはいけないが、別途、平時の監督行政の中でどういう風に見ているのか――ということについて伺いたい。
なぜかというと、最近、地方の金融機関の合併がクローズアップされ、それを、弱いところが合体していいですね、と安直に受け入れてしまう向きがあるようだが、単に合併して資産が拡大するだけでは強化にならないわけで、自己資本がちゃんと充実することが大事だと思う。そういう意味で、公的な資本による充実以上に民間からの出資を募り、公的サイドだけでなく民間サイドからの資本の充実を作っていく。さらに言えば、これにより、日本の資産配分が株式の方に流れていく動きにもつながっていく。それが重要ではないか。
ついては、公的な資本の充実だけでなく、併せて、民間からの資本の充実をどのように進めていくのかを質問したい。
<金融庁 西田審議官>
もともとこの法律は、基本は民間の資本に頼る、あるいは民間の市場からその資本を調達する、あるいは内部需要を蓄積させて資本を充実させることが大事で、それがないとリスクテイクもできないし、たとえば今特に重要なのが、条件変更で金融機関が一生懸命苦労しているが、その中で早期に事業再生をはかるためにはある程度の債権放棄などに踏み込みながら事業再生をして早期に企業を回復させるということも必要だから、そういう意味では前提となる自己資本の増強というのは大変重要だと思っている。
この法律はもともとできた時にはそういった市場環境の中でなかなか民間だけでは資本の調達が難しい中でできた法律で、そのままリーマンショックが来て、資本を集めないといけないが資本を出してくれる人は、地域の金融とは地域の取引先が多いのでまずはその法的処置を使って、その企業に対してしっかりと資金繰りを支援するという形に変わっていった。
ただ平時に入ったときは、これまでの資本を有効活用して円滑な資金供給だけでなく、事業再生の支援であるとか、経営改善の支援にもしっかりと取り組んでもらうためのリスクバッファーとして収益をしっかり上げつつ地方を充実させていくことも必要であるし、一方、取引先にあまり出資で苦労させるわけにもいかないので、公的資金の強化法とのバランスをよく考えながら運用していかなければならないと思っている。